イヌマゴケ目
13科もの多くの科があるが、水中や水辺(カワゴケ科)、林床の腐植土上(コウヤノマンネングサ科とフジノマンネングサ科)、さらに樹幹や岩上など乾燥し易い環境(残る10科)に特殊化した生態的に異なる3グループに分けると理解し易い。

さく歯の形状もこれらの3グループ間で、異なっている。

*ここがポイント
@生育環境や形態が特異なものを先におぼえる。それぞれの科における生育形や葉形、葉身細胞の乳頭の状態は特徴的なので、比較的容易に科を区別することができる。

カワゴケ科は、水中や水際で茎が長く伸びて生育する。

@茎が腐植土中をはい、先端が樹状に立ち上がるものとしてはコウヤノマンネングサ科、フジノマンネングサ科がある。オオトラノゴケ科の種も茎が立ち上がことが多い。いずれも形態的に明確に区別できる。

ヒジキゴケ科は、低地の日当たりのよい岩上にしばしば生育する。葉や雌包葉、さくが特異な形態をもち、肉眼で区別できる。

タイワントラノオゴケ科は、関東以南の石灰岩壁に、極めて稀に生育する。

@2次茎が長く伸びて、樹幹や枝、岩壁から垂れ下がるものは、ハイヒモゴケ科の種かイトヒバゴケ科の一部の種である。
イトヒバゴケ科の種は、葉身細胞がより短く、ひし形になる。

イタチゴケ科は、2次茎が尻尾状でほとんど枝がでない。樹幹や岩壁から垂れ下がり、2次茎の先端が上方に湾曲する。

ヒムロゴケ科の一部にも2次茎の分枝が少ない(枝が出ないように見える)ものがあるが、これらは葉の形が特徴的で、区別は容易である。

@2次茎が羽状〜不規則羽状の枝をもち、樹幹や岩壁から垂れ下がり、先端部が上方に湾曲するものは、イトヒバゴケ科の一部、ヒムロゴケ科の一部とヒラゴケ科である。ヒラゴケ科は葉が平坦に付くため区別し易い。

@葉身細胞が乳頭をもつのは、ヒジキゴケ科かムジナゴケ科、さらに、ハイヒモゴケ科の多くも乳頭をもつ。

トラノオゴケ科の種は、葉が卵円形〜卵状楕円形で船状に窪み、葉先が短く尖る。葉の形や中肋が1本であるため、シトネゴケ目のアオギヌゴケ科と間違い易いが、さく歯の形態が異なる。


  
イヌマゴケ目の科 (属と種の数) 生育地 主な特徴
1 カワゴケ科     (2属3種) 近畿以北に多い。水中や水際に生育 茎が長く伸び、葉は縦に折りたたまれることが多い
2 コウヤノマンネングサ科 (1属2種) 全国各地、林床の腐植土上や湿土上 二次茎が立ち上がり、樹状に枝をひろげる
3 フジノマンネングサ科 (1属1種) 山地の林床、腐植土上 二次茎が立ち上がり、樹状に多くの細い枝をひろげる
4 ヒジキゴケ科    (1属1種) 全国各地で日当たりの良い岩上 雌包葉の葉縁には透明の多くの長毛がある。さくは雌包葉間にかくれるようにつく
5 イトヒバゴケ科 (4属8種) 各地の樹幹や岩上 二次茎が伸びて垂れ下がり、不規則に枝を出すことが多い。さくは包葉間に隠れるか短くのびでる。葉身細胞はひし形
6 イタチゴケ科     (3属13種) 各地の樹幹、稀に岩上 二次茎は尾状で、先端が上方に湾曲する。葉に縦ひだがあることが多い
7 タイワントラノオゴケ科 (1属1種) 中部以西の石灰岩壁上【極稀】 大型でマツムラゴケに極似するが、葉身細胞に乳頭はない
8 ムジナゴケ科     (3属6種) 中部以西に多い。樹幹基部や岩上 二次茎が不規則に枝を出すことが多い。葉身細胞は乳頭をもつ
9 ヒムロゴケ科     (5属6種) 主に暖地(一部は山地にも)の樹幹や岩上 二次茎が羽状、あるいは不規則に枝を出す。葉身細胞は厚膜、平滑
10 ハイヒモゴケ科 (11属19種) 中部以西の暖地で、樹幹、枝、岩壁 二次茎がひも状、または平坦に葉をつけ、長く垂れ下がることが多い。葉身細胞に乳頭があることが多い
11 ヒラゴケ科      (8属25種) 各地の樹幹、岩上 二次茎が平坦に葉をつけ、羽状、あるいは不規則に枝を出す。葉は舌形、長卵形などで葉の先端が丸くなることが多い
12 オオトラノゴケ科 (1属6種) 各地の岩上 二次茎が立ち上がり(岩壁では垂れ下がる)、樹状に枝をひろげる。葉は卵状楕円形で船状に窪む
13 トラノオゴケ科     (4属7種) 各地の樹幹基部や岩上 二次茎が丸く葉をつけ垂れ下がることが多い。葉が卵円形〜卵状楕円形で船状に窪み、葉先が短く尖る